2016年5月4日水曜日

2016.05.03 矢板東高等学校合唱部・吹奏楽部 第13回プロムナードコンサート

矢板市文化会館 大ホール

● 昨年に続いてお邪魔することにした。ぼくが聴きたいのは主には吹奏楽なんだけど,合唱も両部合同の舞台劇も少々以上に楽しみだ。
 とにもかくにも,昨年の印象が強い。その印象はしかし,この1年間でぼくの脳内で変容を被っているかもしれない。今年の演奏を昨年と比較してしまうという聴き方だけは避けなくてはと思う(→結局,しちゃったんだけどね)。
 開演は13時30分。入場無料。

● 内容は今年も3部構成。例年そうなのだろうな。
 第1部は合唱部。まずは,「MISSA BREVIS for MIXED CHORUS」から“Kyrie”,“Gloria”,“Sanctus”の3曲。
 昨年と同じく,男声は3人(プログラムノートの出演者一覧によれば4人いるはずなのだが)。昨年はずいぶん少ないんだなと感じたんだけども,今回はそういうものかという受けとめ方。男声なんてのは3人もいれば充分じゃん的な。

● いやいや,もうちょっと欲しいよね,やっぱり。開演前のプレ演奏で歌った「いざ起て戦人よ」は,もっと大人数の方が説得力が増すタイプの曲だしね。
 しかし,次の「狩俣ぬくいちゃ」も「むらさきの」も,きちんと成立していた。やはり男声なんてのは3人もいればいいのかね。

● 一番面白かったのは,「応援ソング J-POPメドレー」。投入した手間暇が一番大きかったろうから。寸劇が付くんだもんね。
 そのMCが非常によくできていたと思う。旅研究会なんて誰が思いついたんだろう。最後の“女を捨てる”シーンが落ちにもなっていた。誰が演出を考えたのかと思いますな。

● 第2部が吹奏楽。昨年の樽屋雅徳「ノアの方舟」のような大曲(?)はなくて,短打を重ねて得点を積みあげていくという感じ。
 「INCANTATIONS」は附属中の生徒による演奏。技術的には高校生とほとんど差がない(ように感じた)。小学生からやっていた生徒さんが多いんですかねぇ。ツボは心得てるよって感じの演奏だった(ように感じた)。

● ぼくはどうもホルン吹きに目が行くようだ。昨年もホルンの女子生徒に注目したんだけど,今回もホルンの男子生徒をなかなかやるなと思って見ていた。なかなかやるな,っていうと,どうも上から目線で申しわけないんだけど。
 ところで,昨年のホルン女子はどこに行ったのかな。わからなかったな。

● 演奏以外で面白かったのが,「ジャパニーズ・グラフィティ アニメヒロイン・メドレー」での男子生徒2人のMCだ。特に3年生のほう。あれは素なのか演技なのか。
 ま,演技なんでしょう。でもって素なのかと思わせるところが味なんだろうな。セーラームーンについての語り,演奏中の女子生徒に混じってのダンス,そのあとのフォロー。いずれもいい味で。
 ただし,この味はツボにはまらないと出てこないだろうな。常時出せるといいんだけど,そうは問屋が卸してくれない。

● 第3部は,両部合同で今回は「美女と野獣」。吹奏楽部はピットで演奏し,合唱部が舞台で歌う。つまり,合唱部がお得。演劇部からアシストが入ったようだ。
 合唱に求められる技能と舞台で演じる際に求められる技能は一致しないはずで(当然だ),そこで演じる側に少々の戸惑いがあったかもしれない。

● 歌ではなく台詞を喋る際に,栃木弁アクセントがどうしたって入ってしまう。これ,避けようがないね。
 「あなたなの?」という単純極まる台詞であっても,栃木弁のアクセントから脱却するのはほぼ不可能かもしれないなぁ。
 どうやら栃木弁っていうのは,愛をささやくには不向きな言語だね。

● っていうか,栃木県人は「あなたなの?」なんて言わないね。いや,栃木県人じゃなくても言わないな。「あなたなの?」っていう言い方はリアル世界には存在しないものだもんね。
 よかった。栃木弁でも愛はささやける。

● 今回,最も印象に残ったのはガストンを演じた男子生徒。声質のせいか,歌も台詞も最も通りがよかった。役者らしい役者という印象になった。
 合唱部の高校生に演技に関してここまで言うのは酷に過ぎると重々承知のうえで申しあげると(承知しているなら言うな),歩き方に気を配ると舞台がもっと締まったはずだと思う。
 歩幅をどのくらい取るか,直線上を歩くように歩くのかそうではない歩き方をするのか,そのときに目線をどこに持っていくか。
 まずは下半身に神経を届かせること。表情を作るのはその後でよい。

● と,小賢しいことを申しあげたけれども,そんなことは所詮,些事にすぎない。ここに投入してきた時間とエネルギーと集中の大きさは,充分以上に伝わってきた。それがつまり客席を支配する説得力になる。
 お客さんに愉しんでもらいたいと思ってここまで作ってきたのだとすれば,その狙いは百パーセント達成されていたと思う。

● そこは生徒さんたちも感じていたはずで,終演後,客席に向かって深々とお辞儀をした(緞帳が下りるまでその姿勢を保っていた)ときに味わっていたであろう達成感の大きさを思うと,率直に羨ましいと感じる。
 それだけで彼ら彼女らの高校3年間を「成功」という言葉で形容していいいように思われる。自分にはその「成功」がなかっただけに,より羨ましいと感じるのかもしれないんだけどね。

● 東日本大震災,熊本地震の募金活動も併せて行っていた。終演後,ちょっと考えた。この演奏に対していくらまでなら出せるだろうか。その金額を募金していこう。
 プライスレス,だよね。であれば,持ち金ぜんぶ置いていくか。
 ということにはならず,些少な額にとどまったのは返す返すも申しわけないことだった。

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