2016年2月29日月曜日

2016.02.27 リコーフィルハーモニーオーケストラ第59回演奏会

横浜みなとみらいホール 大ホール

● リコーフィルハーモニーオーケストラは「(株)リコーの文化クラブとして1986年に発足した」。ぼくが企業オケの演奏を聴くのは,JR東日本交響楽団マイクロソフト管弦楽団(今はない),日立フィルハーモニー管弦楽団に次いで4回目になる。

● 開演は午後2時。チケットは当日券だと1,500円(前売券は1,000円)。
 演奏したのはマーラーの交響曲第6番イ短調。指揮は井崎正浩さん。1987年からこのオケの常任指揮者を務めている。事実上,発足以来といっていいのだろう。

● この6番の副題は「悲劇的」。この副題はマーラーが付けたものだろうか,それとも後世の誰かが付けたものか。
 実際に聴いた印象では,「悲劇的」という印象はあまり受けなかった。ベートーヴェン以来の「暗→明」が「明→暗」に逆転され,「イ長調→イ短調」の和音移行が全曲を統一するモットーとして用いられている,というのはWikipediaからの引き写しだけれども,「明→暗」をあまり強調しないほうがいいのではないかと思った。

● 「明→暗」を曲全体に投影してしまうと,何か大事なものを取りこぼすことになりそうだ。
 ただし,マーラー(大きく拡大してヨーロッパ人)の考える悲劇と,ぼくがイメージする悲劇との間にかなりのズレがあるのかもしれない。ぼくのイメージする悲劇はやや情緒が先行するもので,ヨーロッパ人の考える悲劇は乾いたもののような気がする。
 そのズレが上のような印象を産んだのかもしれない。

● 90分に及ぶ長大な曲だけど,この曲の印象をひと言で表す言葉は「疾風怒濤」。90分を休みなく駆け抜けなければならない。奏者にとっては神経を尖らせた消耗戦が続くことになる。
 客席でその消耗戦を眺める楽しみ,サディスティックな楽しみってことになるんだろうけど,は,確実に存在するね。

● しかし,「神経を尖らせた消耗戦」は否応なく凄まじい集中を生む。曲が奏者に集中を強制する。
 その結果,ステージから発せられる音の密度が素晴らしい。ギュギュッと凝縮された重さすら感じさせるような音の連なりが,客席に襲いかかる。
 その襲われる快感。つまりそれがライヴの快感といっていいものだろう。畢竟,このために時間をかけて自分の身体を会場まで運び,お金を払って,入場するわけだよね。

● 条件を整えてやれば,CDでそれを味わうこともできなくはないんだと思うんですよ。ただ,そのためのコストがべらぼうになる。
 まず,家庭を放棄しなければならないだろう。資産のありったけをオーディオとオーディオルームに注がなければなるまい。
 つまりだね,できなくはないんだけれども,まったく現実的ではないということだね。

● 呆れたことに,この曲を演奏したあとに,アンコールがあった。マーラー「私はこの世に忘れられ」(リュッケルト歌曲集より)。

● 一応,奏者の皆さんに申しあげたい。
 企業オケなんだから,仕事もしなね。オケの練習ばっかりやってちゃダメだよ。こっちとしてはそうして欲しいんだけどさ。

0 件のコメント:

コメントを投稿