2013年11月9日土曜日

2013.11.08 パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団特別演奏会

栃木県総合文化センター メインホール

● 気をつけなければいけないことがある。コンサートに出かけるのが過多になっていることだ。生のオーケストラを聴くのが日常に組み込まれている。
 もちろん,自分でそうしているんだけど,悪い意味で狎れが出てしまいがちだ。そこを自分でわかっていれば,まぁいいけれども,そのうちその注意すら消えてしまうかもしれない。そうなったらおしまいだ。
 プロは小さい頃から時間のほとんどを費やして今があるんだろうし,アマチュアは年に1回か2回の演奏会のために練習を重ねてくる。そのステージを狎れで聴いてたんでは,演奏者に対して無礼千万という以前に,自分が哀れすぎる。

● 今回はパリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の来日公演。Wikipediaによれば,「フランス国家憲兵隊の共和国親衛隊(Garde républicaine)に所属している軍楽隊」で,「演奏隊員のほとんどはパリ音楽院の卒業者であり,民間との兼職が認められている。現在,22名が民間オーケストラのメンバーを兼務,49名が私立音楽学校教授を兼務している」とある。
 開演は午後7時。チケットはSとAの2種。このホールでは,1階左翼席を自分の定位置にしている。今回もその席を取った。A席だった。3,000円。

● ぼくらは,白人っていうか欧米人に対して卑屈になってしまいがちだ。若い人はそうでもないのかもしれないけど,ぼくの年代だと多くの人がそうだと思う。
 欧米じたいが長く続けてきた人種差別に洗脳されているのかもしれないし,太平洋戦争に負けたことが効いているのかもしれない。
 欧米を憧れの対象にしてしまう。これがなかなか抜けなくて。困ったもんだ。
 クラシック音楽は向こうが本場だから,なおのこと。

● まずは,シャブリエの狂詩曲「スペイン」でご挨拶。
 指揮はフランソワ・ブーランジェ氏。几帳面な人。ていねいにタクトを入れていく。でも,そこはかとなく優雅さをただよわせる。なかなかいい感じ。っていうか,かなりすごくないですか,この指揮者。
 演奏についていうと,メロディーを奏でるのがとてもうまいと思った。楽器に歌わせるのに長けているっていうか。四角い演奏をしていないんですよ。

● 次は,ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」。ピアノの三舩優子さんが登場。彼女のピアノを聴くのは,これが2回目。
 彼女には欧米コンプレックスなんてのはないでしょうね。場数も踏んできてるし,実力も折紙つきだし。
 演奏後の客席に対するショーマンシップの表現もほぼ完璧。やりすぎず,品を落とさず。この部分も含めて,楽団との齟齬がない。楽員のリズムに干渉しない。
 でさ,指揮者のエスコートがまた堂に入っていてね。さすがはフランス野郎だな。

● 15分間の休憩後,ガーシュウィン「ラプソディー・イン・ブルー」。再び,三舩さんが登場。この曲は彼女のためのもの。黙って聴きなさいね,あんたたち,ってなものでしょうね。
 このあたりから,この楽団のすごさがぼくにもわかりだしてきた。メロディーを奏でるのがうまいだけじゃないや,ハーモニーも完璧じゃん,みたいな。

● ボロディンの歌劇「イーゴリ公」より“ダッタン人の踊り”と,最後はベルリオーズの「幻想交響曲」から第4楽章と第5楽章。シャブリエで始まってベルリオーズで終わる。オープニングとエンディングはフランス。
 ここではもう,ひたすら謹聴。ぼく的にはオーボエのオッサンとフルートのメガネが印象に残ったけど,どの奏者がどうのこうのではなくて,まったく破綻のないアンサンブルだし,その,何というのか,艶があった。色気っていうか。
 これがフランスかっていうのは雑駁すぎる話で,フランスじゃなくてもこういう演奏はあると思う。要するに,圧倒的な実力のある楽団ですね,っていうこと。

● アンコールは「アルルの女」の前奏曲。レベルの高さをわかりやすく見せつけてくれた。さらに,「カルメン」の前奏曲でとどめを刺した感じ。
 これじゃ盛りあがらないわけがない。んだけど,ビゼーのこのふたつを並べられると,おい,オレをなめてんのか,っていう気分がきざしてくるところもあってさ。われながら,ちっちゃい男だな,オレ。
 でも,もうひとつあった。ヨハン・シュトラウス「ラデツキー行進曲」。ここまでやられると溶けちゃいますな。サービスのだめ押しって効くね。
 いや,大満足で帰途につくことができました。

● 中高生が団体で来ていた。小学生の集団もいた。当然,それぞれの学校で吹奏楽部に属している生徒たちだろう。
 客席のメインは彼ら彼女らだった。その結果どうなるかというと,客席全体の鑑賞マナーが格段に向上する。不思議だけど,そうなる。
 いや,不思議だけどと言ったのは言葉の流れであって,べつに不思議でも何でもないやね。熱心さが違う。熱心な分だけ,スタミナの持続が問題になることはあるかもしれないけれども。

● 彼ら彼女らは,遠足に来たかのようにはしゃいでいる風があって,それが他のお客さんにも感染するという効果もあったかもしれない。
 休憩時間には,舞台の下に集まって,懸命に舞台をながめている一群もいた。どんな楽器を使ってるのか,気になったんでしょうかねぇ。
 こんなことを大人がやったら,通行の邪魔だよ,ボケッ,そんなとこに突っ立ってんじゃねーよ,ってなるんだけど,彼女たちだとまぁほほえましいこと。
 奏者の入退場の際にも彼らに手をふる。これも大人はできない。中学生は躊躇なくやる。奏者の方もにこやかに応対。こういう光景っていいもんだよね。

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