2013年3月2日土曜日

2013.03.01 フジコ・ヘミング&ヴァスコ・ヴァッシレフ-ピアノとヴァイオリンによる共演

栃木県総合文化センター メインホール

● 開演は午後6時30分。チケットはS席が1万円。そのS席を購入しておいた。
 恥ずかしながら,その金額のために,このコンサートに行くかどうか逡巡した。何日間か迷っちゃいました。しようがないなぁ。
 1万円なんて歯牙にもかけない人って,少なくない数いらっしゃると思うんだけど,目下のぼくにとっては(この先もたぶん同じだろうけど),1万円を一度に遣うのはけっこう踏ん切りを要するんですな。

● 1階はほぼ満席。2階には空席がまとまってあったけれども,トータルでも9割は埋まっていた。
 普段は音楽なんて聴かないんだけど,フジ子・ヘミングのコンサートなら行きたい,っていう人がかなりいたようですね。音楽ファンというよりフジ子ファンって人たち。フジ子ファンのほぼ全員が女性ではあるまいか。ゆえに,今回は観客に占める女性の割合がいっそう高かった。
 これがどういう形で顕現するかといえば,休憩時間に女子トイレに長い行列ができる,ロビーでのCD販売の売上げが増える,自販機で飲み物を買うのに時間がかかる,といったあたりになるわけですね。

● 女の人ってさぁ,なんで並んでいる間に小銭を用意しておかないの? 自分の番が来て自販機にお金を投入する段になってから,バッグから財布をだして,財布から小銭をだしてってやるの? しかもさぁ,なんで自販機の前で悩むの? 自販機で売ってるものなんて決まってるんだから,最初から決めときなよ。
 それからさぁ,なんで自販機の前に立ったままで釣り銭を財布に入れて,財布をバッグにしまうの? それって,横にどいてからやってもよくない?
 もうちょっと背中にも眼を持つように努めてもらえるとありがたいかなぁ。まぁ,そこが可愛いといえば可愛いんだけどさ。

● フジ子・ヘミングって,少なくとも日本の音楽アカデミズムの世界では員数外の扱いっていうか,評価の対象になることはないでしょ。巧いのはアゴーギグだけだなんて言い方もされてたり。
 でも,多くのファンを持つ。純文学に対する大衆文学的な。で,おまえはどうなんだと言われれば,ピアノ曲ってあんまり聴かないんだけど,最も多く聴くのはフジ子・ヘミング。おまえの耳はその程度なのかと言われれば,そうですと答えるしかない。
 御年80歳。さて,どんなピアノを聴かせてくれるのか。

● 前半はフジ子さんのソロ。
 バッハ コラール(BWV147)
 バッハ シチリアーノ 第2楽章(BWV1031)
 ムソルグスキー 展覧会の絵
 リスト ため息
 リスト カンパネラ

● バッハの2曲を終えたあと,マイクを使って客席にあいさつ。ハンガリーで風邪をひいて耳がほとんど聴こえないので補聴器を使っている,耳に手をやる仕草をするけれども気にしないでください,と。
 そのバッハだけど,どうなんだろ,特に何も感じなかったんですが。

● けれども,「展覧会の絵」には吸引力があった。この長い曲を集中を切らさずに聴ききることができた(と思う)。
 「展覧会の絵」といえば,ラヴェル編の管弦楽版の方に馴染みがあるけれども,元祖はピアノ曲だってことは,ぼくだって知っている。辻井伸行さんのCDで一度聴いたことがあるだけなんだけどね。

● リストの2曲。艶っぽい。本当に艶やかで,曲が鍵盤から立ちあがって,麗人となって,こちらに歩いてくるんじゃないかと思った。
 身を乗りだして,鍵盤上の彼女の指の動きを見つめた。80歳でこれか。力強いし,柔らかいし。指じたいがキレイなんですねぇ。
 この2曲は彼女のCDでもう数え切れないほど聴いている。その学習効果もあったかもしれないし,CDで何度も聴いた曲がこういうふうに演奏されているのかってのを目のあたりにした感動?のなせる効果もあったかもしれない。

● 立っている地平が,したがって見えている光景が,他の音楽家とはおそらく違うだろう。
 より高いところからより遠くを見ているっていう意味じゃなくてね。たとえば,東京に住んでいればスカイツリーが見えたり,夜になれば夜景がきれいだったりするんだろう。栃木に住んでると,那須や日光の山なみが見え,夜は真っ暗になるから星がきれいだったりする。そういう違いね。

● 20分間の休憩の後,今度はヴァスコ・ヴァッシレフも登場。
 最初はベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番「春」。この人も天才でしょうね。ぼくが何か言ってはいけないような気がする。
 楽章ごとに拍手が起こった。それをとがめる雰囲気はステージにも客席にもなかった。この辺がオーケストラとは違うところ。ステージと客席との距離が近い。フレンドリー。ヴァッシレフのキャラクターかもしれない。

● 以後,プログラムは次のように進行。
 マスネ タイスの瞑想曲
 ラヴェル ハバネラ
 ブラームス ハンガリー舞曲第1番
 シューベルト アヴェマリア
 助川俊弥 ラクリモーサ(ちいさき いのちの ために)
 ブラームス ハンガリー舞曲第5番

● シューベルトの「アヴェマリア」では,これは声楽で聴いてみたいなぁと思ってしまうのは仕方がない(森麻季さんのCDで時々聴いている)。もちろん,彼のヴァイオリンも存分に歌っているんですけどね。
 アンコールではブラームス「ハンガリー舞曲第1番」を再度演奏。
 終了は8時55分。1万円,思い切ってよかったですよ。

● しかしね,いくつか残念なことがあった。
 開演直後に入ってくるお客さんがかなりの数,いたこと。6時半開演だからね。なかなか厳しいとは思うんだけど,感興を削ぐことは間違いないわけで。
 演奏中にプログラムを弄んでカサコソという音をたてる人がいたこと。
 最も腹が立ったのが,演奏が終わっていないのに,ブラボーを叫ぶ馬鹿がいたことだ。ディミヌエンドで消えいるように終わるのに,消えていないうちに叫ぶんだから,どうにもならない。こういう野猿をどうにかして外につまみだす方法はないものか。

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