2012年10月14日日曜日

2012.10.13 マグノリアオーケストラ第9回定期演奏会

大田区民プラザ大ホール

● 昨年はこの時期にマロニエ交響楽団の創立記念演奏会があった。年に一度は定期演奏会を開催するのかと思っていたら,次回は来年の予定だという。
 となると,今月は地元(栃木)で管弦楽の演奏を聴くことができない。厳密にいうと,28日に足利市民交響楽団の定期演奏会があるんだけれども,足利はあまりに遠い。心理的には東京よりもずっと遠い。行けるかどうか。

● というわけで,13日に東京に出た。困ったときの東京頼み。東京に行けば,必ず何かあるからね。
 わざわざ東京に出るからには,ふたつは聴いて帰りたいというケチ根性。この日もふたつの演奏会を聴くことができた。

● ひとつめは,マグノリアオーケストラ。「東京学芸大学附属高校音楽部のOB・OGが中心となって活動しているアマチュアオーケストラ」とのこと。
 この学校から東大を卒業した人が,知り合いにいるんだけど,その人は,高校の方が大学より面白かったっていう。つまり,高校の友だちの方が東大の友だちよりすごい人たちだったってこと。
 勉強そっちのけで音楽にのめりこんでいたのに,楽勝で東大に合格したとか,受験勉強なんか歯牙にもかけないで,好きな分野を原書で勉強していたとか,そういった型破りな人がけっこういたのかなぁと推測してるんですけどね。
 つまりですね,育った環境から何から,ぼくとは全然違う人たちのはずなんですね。ぼくに言わせれば雲の上の人たちね。彼らがどんな演奏をするのか。

● 開演は午後2時。入場無料。曲目は次のとおり。
 J.シュトラウス 「こうもり」序曲
 メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
 チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調
 
● 指揮者は山中一宏さん。学芸大学附属の50期生。昭和62年生まれにあたるそうだ。25歳ってこと。若いねぇ。現在は東大の大学院で原子時計の研究をしている。とはプログラムの紹介による。
 「こうもり」序曲の途中で楽譜を落とすってハプニングがあったんだけど,平然と指揮を続けた。何度も練習してるから,自然に暗譜してるんでしょうね。

 ヴァイオリン協奏曲のソリストも卒業生。巽大喜さん。こちらは51期とのこと。6歳からヴァイオリンを始めた。やはり東大院で菌根菌の研究をしているそうだ(菌根菌って何だ?)。
 というわけで,指揮者もソリストも自前。したがって,仲良し同好会的な雰囲気を醸すことになる。手作り感が濃厚だと表現してもいい。
 団員も若い人が多かったようだ。平均年齢は間違いなく20代。若い人たちが和気藹々とやっているっていう印象でしたね。
 30代以上は企業や役所の中枢で忙しくしているんでしょうね。練習する時間も取れなくなるんだろうな。

● この演奏会に行こうと思ったのは,メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴けるから。この曲はあまりに有名だけれども,初めて生で聴いたのは3年前。田口美里さんのヴァイオリンだった。鳥肌がたつ思いがした。
 ただし,あのときはピアノ伴奏だったし,第1楽章だけだったので,ちゃんとした管弦楽でフルに聴くのは今回が初めてだ。

● しかぁし。あろうことか,演奏の途中で寝てしまったんですよ。短い眠りだったけど断続的に。前夜は職場の呑み会があって,けっこう呑んだような。遅くまで起きてたんだけど,朝は早くに目が醒めてしまう年齢になってしまったような。
 要は,体調管理がまったくなってなかったってこと。もったいないし,演奏者に失礼だし,何をしてんだかまったく。
 演奏する方は,年に1回のこの演奏会に照準を合わせてくる。すべての練習は今日のためにあったというのに,聴く側が客席で居眠りするとは。失礼という言い方では足りない。そういうときには出かけないという戒律を自分に課すべきなんですけどね。
 この曲が終わった後の客席の拍手は,ブラボー成分が濃いものだった。しかし,ぼくの印象はそんなわけで,非常に散漫なものになってしまった。本当にごめんなさい,です。

● これで意識がスッキリしたんで,チャイコフスキーの5番は普通に聴くことができた。
 木管から始まるし,2楽章ではホルンの独奏が続き,クラリネットやファゴットが絡んでいく。だからこの曲については演奏の出来を決めるのは管である,というほど単純ではないんだろうけど,その管が安定してて,こちらも安心して聴いていられた。
 っていう言い方はじつは失礼であって,要するに相当以上に巧いのです。急停止も急発進もピタッと揃うしね。
 そんなに練習時間は取れないはずだと思うのでね,少ない練習時間を効果的に使っているってことになるんだけど,それ以前に,効果的に使えるだけの技量を持っているってことですよね。

● もちろん,客席からはブラボーの声が飛んだ。これ,ステージ側には嬉しいらしいね。そりゃそうだよな。
 でもね,ぼくは,このブラボーは禁止すべしという意見だね。4楽章が終わったその刹那にブラボーと叫ばれると,余韻まで吹っ飛ばされてしまうものな。ほんの2秒か3秒,余韻に浸っていたいじゃないですか。それを許さないのがあのブラボーなんだな。
 よろしく禁止すべし(どうやって?)。ブラボーの思いは拍手に込めればいいじゃないか。

● 高校生がまとまって聴きに来ていた。この学校の音楽部の現役生だろうか。これだけまとまって先輩の演奏を聴きに来るんだねぇ。求心力が強いのかなぁ,この学校。あるいは音楽部の特徴なのか。
 高校生以外にも観客の多くは,この学校に何らかの関係がある(あった)人たちのように思われた。

● ぼくは不幸な高校時代を過ごしてしまったので(誰のせいでもなく,自分がそうしてしまったんだけど),高校に関しては愛校心ゼロ。同窓会など行ったこともないし,これからも行かないだろう。部活も何もしてなかったから,友人も少なかったし,その少なかった友人とも今では行き来が絶えている。
 それでいいと思ってるんだけど,こうして卒業後も学校を軸にした活動を続けている人たちを見ると,何だかちょっと複雑な気持ちにもなってくる。正直,羨ましさも混じりますな。

● 今回は開演までにだいぶ時間があったので,下丸子駅から多摩川まで歩いてみた。天気も良かったしね。
 河川敷のグラウンドでは少年野球の試合が行われていた。堤防はサイクリングロードになっているんでしょうね(その業界の人は多摩サイって呼ぶんだったかな),ロードバイクが何台も行き交う。走っている人もいる。歩いている人もいる。思い思いに土曜の昼を過ごしている。目に入ってくる風景は,何もかもが平和だった。
 音楽を演奏する人もいれば,それを聴く人もいる。自分もまたその平和な光景の一点なのだろうなと思った。

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