2009年11月30日月曜日

2009.11.03 第1回とちぎ音楽祭

栃木県総合文化センター メインホール

● 「とちおん」こと第1回とちぎ音楽祭というのに行ってきた。総文センターのメインホールとサブホールを使って,複数のコンサートを2日間にわたって開催しようという野心的な試み。
 そのうち,ぼくが聴いたのはふたつ。1時半から仲道郁代さんのピアノリサイタル,6時半から趙静さんのチェロリサイタル。時間はそれぞれ90分間の予定だったが,前者は90分を超過し,後者は90分に満たなかった。が,おおよそ時間どおり。場所はメインホール。

● 仲道さんといえば美貌のピアニスト。場数も実績も充分。ベートーヴェンソナタの全曲を収録したCD全集も出していますね。
 ただ,彼女の知名度をもってしても,メインホールはガラガラでねぇ。前方の数列は埋まっていたけど,これは来賓と招待者の席だったようだ。それを除くと空席の方がはるかに多かったですね。
 「仲道郁代オールベートーヴェンピアノリサイタル」という名前のとおりで,仲道さんが演奏したのはベートーヴェンのピアノソナタの中から,「悲愴」「ワルトシュタイン」「月光」「熱情」の4曲。

● 演奏の前に仲道さんが曲の解説をしてくれた。そういうものはプログラムに載せてもらって,ステージでは演奏だけやってもらいたい,奏者はステージではお喋りであってはならない,とも思うんだけど,彼女の肉声で解説を聴けるのはラッキーでありますね。
 っていうか,「とちおん」にはプログラムなどない。
 ちなみに,料金はA席が3千円,B席が2千円。これで仲道さんの演奏が聴けるわけだ。

● 仲道さんの演奏は軽いんですよ。軽々と弾いているんだけれども,吸引力があるんですね。ピアノは飽きる,途中でお腹がいっぱいになると前に書いたけれども,名手の演奏は途中で飽きるなんてことはないんですね。
 
● 午前中は,サブホールで「オールショパン 子供のための音楽会」があったようだ。これも仲道さん。そのせいか,午後の演奏にも子供連れが多かった。
 が,演奏が始まると静かに聴いていた。たいしたものだね。問題は招待客に多かった印象。休憩時間が終わっても席に戻らないとか。

● 5時からサブホールで「音楽祭フォーラム」ってのがあったんで,聞きに行ってみることにした。「音楽と文化,教育,地域振興」をテーマに,「出演者,とちぎ特使,教育・学識経験者,ジャーナリストほか」が話をしあう。ひょっとして仲道さんなんかも出るのかなと思っちゃったんですな。
 ところが,行ってみたらば。壇上には4人の男がいた。国会議員と県会議員。あとはNHKを退職した某氏(学識経験者ということでしょう)と主催者(事務局長)の某々氏。
 間違ったところに来てしまったと思ったものの,途中までつきあった。

● 某々氏はこの催事の自画自賛。たしかに大変な催しを実行したわけで,自画自賛は許されていい。以下は,姑息なあら探しです。
 複数のコンサートを同時進行してコンサートの「はしご」ができるようにしたいんだそうだ。原則出入り自由だ,と。でもね,演奏中の出入りを許したのでは,演奏も鑑賞も成立しなくなる。
 たぶん,「ラ・フォル・ジュルネ」を範例にしているんだろうけども,「ラ・フォル・ジュルネ」でコンサートの途中で出たり入ったりするのまで自由にしているとは聞いたことがない。そういうことをしなくていいように,短時間のコンサートを数多く開催しているはずだ(ひょっとして,途中入退室も認めているのか)。

● 来年は一挙に5日間開催に持っていきたいとおっしゃる。屋台を出して,コンサートの後に気軽に飲んだり食べたりできるようにしたい,許可が出るかどうかわからないけれども,とも語っていた。
 「ラ・フォル・ジュルネ」が開催されるフランスのナント国際会議場は知らず,総文センターのどこに屋台を出す場所があるというのだ。
 総文センターには「オーベルジュ」が運営するレストランが営業しているし,道路を隔てれば喫茶店もある。センターの裏側は泉町だ。酒を呑む場所はいくらでもあるのだ。
 屋台を出して客を囲いこんでどうする。周辺の店が潤うことを考えたらどうか。その方が「とちおん」も地域に歓迎されるだろう。

● さて,6時半から趙静さんのチェロリサイタル。無伴奏で彼女のチェロのみ。バッハの無伴奏チェロ組曲の1番と3番。レーガーとカサドのチェロ組曲をひとつずつ。
 レーガーとカサドは始めて聞く作曲家だ。今回のコンサートで演奏されることはわかっているわけだから,予めCDを聴いておいた方がいいかどうか。
 どっちでもいいでしょうけど,ぼくは予習はしない主義。主義というほど大仰なものでもないが,初めて聴くのが生であるのはラッキーなこと。
 聴衆は前方の招待客以外はほんとにチラホラという程度。同じ時間帯にサブホールで阿久澤政行氏(地元出身)のピアノリサイタルがあった。こちらは開演前から長い行列ができていた。ピアノとチェロの違い,チケット料金の違い(あちらは千円)だろうけれど,会場を逆にした方が良かったろうね(ちなみに,午前中の仲道さんの子供相手のコンサート(サブホール)も満員の盛況だったらしい)。

● しかし,出入り自由なのがね,演奏中に目の前をスタッフに先導されたお客さんが通り過ぎるて行くんですよ。ものすごい邪魔。ステージに集中できない。メジャーリーガー級の奏者が演奏してるっていうのに。
 ということで,印象はちょっと微妙ですねぇ。来年はどうしようか。

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