2018年4月7日土曜日

2018.04.01 全日本医家管弦楽団 第28回定期演奏会

東京オペラシティ コンサートホール

● 全日本医家管弦楽団の定演。その名のとおり,お医者さんたちのオーケストラ。28回を数えるこの楽団の演奏会を聴くのは,しかし,今回が初めてだ。
 医師といえば激務の代表(特に,外科の勤務医)。日本の医療は医師や看護師の使命感と責任感でもっているようなものだ。おおもとのシステムは制度疲労を起こしていて,ほぼどうにもならないのではないか。ひょっとすると,医師や看護師の使命感や責任感の強さが,制度の問題を見えにくくしているのかもしれないんだけど。
 この点に関する国会の怠慢はどうしたことか。モリだのカケだの,どうでもいいことにうつつを抜かしている暇があるなら,医療問題をなぜ議論しない?

● ともあれ。激務の合間をぬって時間を作るんでしょうね。大学までずっと楽器をやっていた人たちなのだと思うんだけど,卒業後もそれを維持するのはさすがに難しいだろう。定演前の短い練習で錆を落とすのがやっとなのではないかと思う。必死こいて錆を落として,曲を仕上げるのだろう。
 さりながら,そうであればこそ表現できるものがある。こめられる思いがある。いや,頭が下がります。

● 開演は午後2時。チケットはA,Bの2種で,Aが2,500円でBが1,500円。どちらでもいいから当日券を買おうと思っていた。で,当日券の売場を見つけて,そこに向かっているときに,爺さまに声をかけられた。当日券? と。売場がわからないのかと思って,売場を指さして教えてあげたんだけども,どうもそういうことではないらしい。
 券が余っているから使えということだった。招待券をもらったらしい。招待券というのは2枚送られてくるらしく,一緒に来る人などいないから1枚余っているのだ,というわけだった。

● ありがたくお言葉に甘えることにしたんだけども,3階席だったのはいいとして,件の爺さまの隣になるわけだ。なので,爺さまの話を聞くことになる。
 以前はちょんちょん跳ねで来たものだが,最近は億劫になっていけないという話をしていた。歳だからってことなんだけども,そんなに高齢には見えなかったんだけどね。といっても,後期高齢者にはなっているのかな。
 近い将来にぼくもその年齢になる。やはり出かけるのが億劫になるんだろうか。

● 目下のところ,東京に出るのはできる限り控えて,地元で開催される演奏会に沈潜しようと思っているんだけども,こういう話を聞くと,行けるときに行っておいた方がいいのかもしれないと思えてくる。
 件の爺さまはたぶん都内に住んでいるのだろう。ぼくなんぞは栃木から出てきているのだ。出不精になったら,その影響は爺さまより(たぶん)大きい。
 地元に沈潜するのは,後期高齢者になった後のためにとっておくのがいいのかもしれない。

● 曲目は次のとおり。指揮は曽我大介さん。
 チャイコフスキー 荘厳序曲「1812年」
 チャイコフスキー バレエ「白鳥の湖」より“情景” “ワルツ” “白鳥の踊り” “ハンガリーの踊り” “終曲”
 ブラームス 交響曲第2番 ニ長調

● 「1812年」には合唱が加わった。「一音入魂合唱団」。この合唱団に接するのはこれが二度目になる。2016年11月の日本IBM管弦楽団の定演に登場していた。そのときも指揮は曽我さんだった。
 この合唱団は,もともと「IBM社内の合唱愛好者が集結」して結成されたもの。現在ではIBMに限らず,広く門戸を開いているようだが。

● 「白鳥の湖」はこちらは気楽に聴くことになる。ここでのコール・ドが俺好きなんだよなぁ,とか,この旋律はオデットが「私はここよ,ここにいるのよ」って王子に切なく訴えるサインなんだよな,気づいてやれよ,王子よ,とか,バレエの情景を思い浮かべて,まぁお気楽に聴くわけですよ。
 で,聴く側はこの聴き方でいいんだと思うんだけども,演奏する側はそう気楽にはやっていられない。逆だよね。優雅な調べを奏するには,弦なら細かく左指を動かして,右手の神経は弓に通わせなければならない。忙しいことこの上もない。

● ブラームスの2番。1番とは対照的に,ブラームスが短期間で完成させた曲だということが強調されることが多い。曲の出来不出来はかけた時間に比例するものではない。というか,個人的にはあまり時間をかけてはダメなのじゃないかと思っている。まったくの素人考えだけど。
 1番はズッシリと重いという印象を受ける。2番は軽やかだ。重が軽に勝るということはないわけで,どちらが好きかは好みによるとしか言いようがない。
 1番は“つっかえつっかえ”という印象を受けることがあって,ぼく一個は4番の次に2番が好きだ。

● 先に,錆を落とすという言い方をした。実際,週に2日は確実に休めるという仕事ではないだろう(中にはそういう人もいるかもしれないが)。日常の間に楽器に触るまとまった時間を取るのは容易ではないはずだと思うのだ。
 まして,楽器を鳴らすには場所も選ばなくてはならない。本番が近づいてから,意を決して時間のやりくりをすることになるのではないかと思う。
 そもそも,社会人になってから上手くなるなんてあるんだろうか。それにしては,かなりの水準をキープしている。出発点において相当な腕前だったのだろうかなぁ。

● アンコールはボロディン「ダッタン人の踊り」。ここでも一音入魂合唱団の合唱が入った。もちろん,こういう編成の「ダッタン人の踊り」は初めて聴くものだ。
 彼ら彼女らは明日からまた激務の日常に向かっていく。この演奏会を催行するのも相当に大変だと思うのだが,同じ大変でも息抜きのできる大変さなのであろうな。

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