2014年10月26日日曜日

2014.10.25 第19回コンセール・マロニエ21 本選

栃木県総合文化センター メインホール

● コンクールではあるんだけど,ぼくとすれば普通のコンサートでは聴けない曲を聴くことのできる貴重な機会。楽しませてもらおうと思って来ている。
 本選に残るほどの人ならば,腕はまず間違いないわけだしね。

● 今年度のコンセール・マロニエは弦と声楽。
 まず弦。8人。うち,コントラバスが5人。「コンクールのチャンスが比較的少ない楽器」なので応募が多いらしい。

● トップバッターは,そのコントラバスから大川瑳武さん。外見はそうは見えないんだけど,藝大附属高校の3年。クーセヴィツキーのコントラバス協奏曲。ピアノ伴奏は尾城杏奈さん。
 コントラバスというと,弦楽器のベースで,悠揚迫らぬ大人の風格という印象なんだけど,けっこう高い音も出るんだね。

● ヴィオラの飯野和英さん。藝大院を修了している。ポーション「パッサカリア」を独奏で。次にボーエン「ラプソディー」。ピアノ伴奏は秋山友貴さん。
 難しい曲なんじゃないですか。多彩な技巧が繰りだされる。
 が,演奏中に弦が切れるというハプニングが発生してしまった。これって,審査にどの程度影響するんだろう。集中も切れてしまうでしょうね。

● コントラバスの金子さくらさん。東京音楽大学大学院2年。ボッテジーニの「エレジー」と「グランドアレグロ」。ピアノ伴奏は山崎早登美さん。
 コントラバスだから,当然,楽器を抱きかかえるようにして演奏しますよね。ぼく,コントラバスになりたいと思った。さぞや幸せなことだろう。

● 続いて,コントラバス。篠崎和紀さん。藝大を卒業。演奏したのは,クーセヴィツキーのコントラバス協奏曲。
 同じ曲なんだけど,大川さんとは違った味わい。軽くてなめらかな感じを受けた。
 たぶん,ピアノ伴奏者の違いもあるでしょうね。そのピアノは平野享子さん。

● ヴァイオリンの中村里奈さん。藝大の4年生。イザイの無伴奏ソナタと,ヴィエニャフスキの「創作主題による華麗なる変奏曲」。ピアノ伴奏は佐久間晃子さん。
 この人,何者?っていう感じ。巧すぎないか。客席をパッと掴むというか自分に集中させるというか,その術まで知っているようだ。

● チェロの佐山裕樹さん。桐朋高校の3年。チャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」。ピアノは和田晶子さん。
 うっとりした。曲なのか演奏なのか。演奏なんだろうな。技術的なものだけじゃないんでしょうね,ここまでの演奏ができるって。よくわからないけど。
 まだ17歳でしょ。その間,チェロに込めてきた時間と労力を想像すると,敬意というか敬服の気持ちが自ずと湧いてくる。普通はなかなかできないことをやってきた人なんだと思う。

● コントラバスの片岡夢児さん。東京藝術大学大学院3年。ボッテジーニのコントラバス協奏曲第2番。ピアノは再び,平野享子さん。
 手練れという印象。大きな楽器が身体の一部になっている。抜群の安定感。平野さんのピアノも聴きごたえがあった。

● 最後もコントラバスで白井菜々子さん。東京音楽大学3年。ウィーン国立音楽大学に留学していたので,年齢はもうちょっと上になるんだと思うけど。
 ボッテジーニの「ボレロ」と「カプリッチオ・ディ・ブラブーラ」。ピアノは再びの山崎早登美さん。
 すでに充分巧いんだけど,さらにかなりのノビシロがあると感じた。清新な印象を受けた。
 ま,ぼくがこういうことを言っていいのかと思うんですけどね。おまえに何がわかるんだよって,自分でも突っこみたいからね。

● 次は声楽。6人。ソプラノが大半を占めるのかと思いきや,ソプラノは半分の3人。あとは,アルトとテノールとバリトンがひとりずつ。
 正直,あれですよ,ソプラノを延々と聴くのはちょっと辛いもんね。助かったっていう感じ,ありましたね。

● トップはソプラノの杉原藍さん。藝大院2年。ピアノは鳥羽山沙紀さん。声楽の人はさすがに表情豊かで,これができないと話にならないんでしょうねぇ。
 特にコケティッシュな役柄を演じるときの役作りというか,表情の作り方は,上手なものだと思う。っていうか,これが下手な女の人って見たことがないんで,たぶんコケティッシュだけは自然にできるんだろうな。
 女性の本質はコケティッシュにあるんじゃないかと,バカなことを考えながら聴いていた。

● テノールの髙畠伸吾さん。武蔵野音大の博士前期課程を修了。ピアノは菊地沙織さん。
 ひきつづきバカなことを考えている。イタリア人と日本人はだいぶ違うんだろうけど,違うのは男であって,女は,わが大和撫子もイタリア女もさほどに違わないのじゃないか。女は人種国籍を問わず,女の本性に添ってあまり作為せずに生きているように思える。
 文化だの地政学的要因だの歴史なのっていう,くだらぬことに大きく規制を受けているのは,主には男の方じゃないか。
 なので,イタリアのオペラを演じる場合,男性の歌い手の方が役作りに手こずるんじゃないかなぁ,ってことなんですけどね。

● アルトの藤田槙葉さん。藝大卒業。ピアノは森田花央里さん。
 藤田さんが歌ったのはシリアスな場面のアリアで,コケティッシュなところはなし。そうした曲を選ぶのも,人がらというか性格なのかなぁ。

● ソプラノの和田しほりさん。桐朋の大学院3年。ピアノは矢崎貴子さん。
 ずいぶん場数を踏んでいるんでしょうね。堂々たる歌いっぷり。

● バリトンの高橋洋介さん。藝大院修了。ピアノは谷池重紬子さん。
 ルックスがいい。イケメンだ。しかも実力充分。オペラでもいろんな役がやれそうだ。

● ソプラノの藤谷佳奈枝さん。イタリアのパルマ音楽院に在籍している。ピアノは結城奈央さん。
 すでに風格というか貫禄すら感じさせる。圧倒的な声量と説得力。統制がとれた歌唱。これがソプラノよ,ちゃんと聴くのよ,と言われたような気がした。
 こういうコンクールって,巡りあわせや運ってあるんだろうな。一昨年と比べると,声楽部門の出場者の水準がかなり高かった(と思われる)。高水準での争いになったのではないかと思う。

● どういうわけか観客が多かった。昨年比で10倍くらいに増えていた。
 PRの効果? だとしたら,どんなPRをしたのかね。

0 件のコメント:

コメントを投稿