2013年9月30日月曜日

2013.09.28 須川展也サクソフォン・リサイタル with 田名部有子

栃木県総合文化センター サブホール

● 開演は午後2時。チケットは1,500円。事前に買っておいた。
 当日券もあったようだけれど,サブホールは「ほぼ」を付ける必要がないほどの満席。3階のバルコニー席まですべて埋まった。

● 「宇都宮短期大学創立50周年プレイベント」というわけで,大学側の招待客もいたろうし,コンサート終了後は,吹奏楽をやっている中学生や高校生にクリニックを行う「レベルアップ講座」があったから,中高生もまとまって来ていた。
 のだけれども,須川さんのサクソフォンをこの料金で聴けるとなれば,この程度には集まるものでしょうね。

● 第1部は須川さんのソロ。ピアノ伴奏は小柳美奈子さん。
 カッチーニ(浅川朋之編) アヴェ・マリア
 バッハ G線上のアリア
 吉松 隆 ファジーバードソナタ
 ピアソラ リベルタンゴ
 ガーシュウィン(狭間美帆編曲) 「すべてを知っている場所」からの便り

● この演奏について語る語彙が,どうもぼくの中にはないようだ。語彙がないということは,それに対応する感性や感覚もないのだと考えるべきでしょうね。
 モヤモヤとして言葉にならないもどかしさがあるんだけれども,たぶんそれは,出かかっているのに出ないといったものではなくて,感性がないために掴み損ねていることからくるもどかしさなんだと思う。

● 「アヴェ・マリア」はこちらの涙腺に働きかけてくる感じ。サクソフォンが歌っているという言い方は,できれば使いたくない表現だ。そうではない。このあたり,ピタッとはまる語彙が出てこないわけだ。
 あくまでなめらか。艶めかしいといっていいほどになめらかで,誤解をおそれずにいえば,女性的な演奏だ。須川さん,ひょっとすると女性的な感性を女性以上に持っている方かもしれないと思った。

● 「ファジーバードソナタ」は須川さんが依頼して作曲してもらった曲とのこと。ジャズっぽく始まって,いろんな表現が登場する。3楽章のはじめは神楽を連想させる。
 奏法もいろいろ出てくる。音をださないで息だけを発する。ガワを叩く。最後は重音奏法というんだそうだけど,複数の音を一緒に出す。当然,色は濁るんだけど,こんなこともできるんだなぁ,と。

● 「リベルタンゴ」はいろんな楽器で演奏される名曲ですな。クラリネットで聴いてよし,ヴァイオリンで聴いてよし,何でもよし。演奏時間もちょうどいい。
 ちょっと気分が下向きのとき,役に立ってくれるかも。ちょっと以上にふさいでいるときは,逆効果になりそうでもあるけどね。ぼく的にはiPodに入れておきたい一曲。

● 第2部は,次の3曲。
 スパーク パントマイム
 プーランク トリオ
 長生 淳 パガニーニ・ロスト

● 田名部さんのソロから。スパークの「パントマイム」をテナーサクソフォンで。田名部さん,須川さんのお弟子。高校生のとき,須川さんのコンサートは皆勤したと話していた。
 それがまっすぐ今につながっている。稀有な人生といっていいんだろうな。羨ましいとは思わないんだけど。いや,やっぱり羨ましいかな。

● あとの2曲は須川さんと田名部さんのデュエット。「パガニーニ・ロスト」も須川さんが依頼して作曲されたもの。
 ソプラノサクソフォンの音色って,クラリネットのようでもありオーボエのようでもあり,ときにフルートっぽかったり。それでいて,当然ながら,そのどれでもない。いろんな顔を持つ楽器。

● 小柳さんのピアノにも注目。当然,ソロの部分があるわけだけど,そこを含めて,伴奏は出過ぎちゃいけないってのが基本なんでしょうか。かといって,平板じゃつまらない。その辺の呼吸って難しいんでしょうね。
 小柳さん,その辺が緩急自在っていうか,須川さんと田名部さんを掌で転がしているような感じを受ける瞬間,瞬間があった。彼女のピアノのみの「リベルタンゴ」を聴いてみたいかなと思った。

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