2013年7月16日火曜日

2013.07.15 栃木チェロ協会第14回定期演奏会

宇都宮市文化会館 大ホール

● 栃木チェロ協会というのがあって,すでに定期演奏会を何度も開催している。のだが,ぼくはその存在を知らなかった。当然,定期演奏会を聴くのも今回が初めて。
 開演は午後2時。チケットは1,000円。

● 会長は宮田豊さん。今やメジャーに登りつめた感のある宮田大さんのお父さん。サイトを見ると,宮田大後援会といった趣もありますな。

● けっこうな数の会員がいる。考えてみればアレだよねぇ,楽器ってたくさんの種類があるわけだから,何らかの楽器を趣味としていじってますよっていう人の数,相当なものですよね。加えて,ぼくのように彼らの演奏を聴く人がいる。
 言っちゃなんだけど,これ,そっくり遊びだよね。膨大な時間が遊びに費やされているわけだよねぇ。
 遊びのない人生なんて生きるに値しない。同じように考える人はたくさんいるだろう。生存を維持するのに精一杯の人生なんて,ちょっと願いさげだ。

● でも,地球規模で見れば,遊びどころじゃない人たちが多数派だろう。食べるものがろくにないとか,内戦中だとか。日本っていい国だし,今っていい時代だなぁ,と。
 どんな状況下でも,たぶん何らかの遊びを見つけるっていうか,見つけずにはいられないのが人間というもので,厳しい状況下に生きている人たちも,何らかの遊びは手中にしていると思う。
 だけども,遊びをむさぼれるのは,やはり限られた人たちだよね。週に1回,楽器の練習をするなんてのは,むさぼるといっていい水準だと思う。
 ぼくらは国と時代に恵まれている。なんだかんだ言ってもね。

● 前半は,チェロのみで次の3曲を演奏。
 バッハ G線上のアリア
 バッハ シャコンヌ
 エルトル・ヴィラ=ロボス ブラジル風バッハNo.5

● この演奏会に行く気になったのは,バッハのシャコンヌが聴けるから。シャコンヌは元々はヴァイオリンのソロで演奏されるもの。そのヴァイオリンと管弦楽版はCDで聴いたことがある。弦楽合奏版は生でも聴いた。チェロで演奏するとどうなるのか。これは聴くしかないでしょ。
 チェロのシャコンヌも素晴らしいんでした。ズンズンと体に響いてくる。曲の荘重感とチェロの音色,放射される音の照度が,ピッタシカンカンという感じ。
 チェロって,オーケストラで低音を担当する弦楽器っていうイメージだけど,実際にはけっこう高音まで出せるんですね。チェロだけでカバーできちゃうんですな。

● ブラジル風バッハでは細野尚美さんのソプラノが加わった。
 プログラムの曲目解説によると,「ヴィラ=ロボスは,バッハの音楽こそが全ての民族に通じると信じていて,バッハ音楽とブラジル音楽を合わせたのがブラジル風バッハ」というわけなんだけど,こちらは基本的にブラジルの音楽を知らない。
 かといって,どこがブラジルでどこがバッハなのかを,頭で聴き取ろうとしたんじゃ,演奏を楽しめない。なので,ボーッと聴いてたんだけど,ブラジル風じゃないただのバッハの方がいいよなぁ。

● 後半は,ゴスペルグループの「Brown Blessed Voice」も登場。
 「Amazing Grace」をまず歌って,次の「Total Praise」はBBV代表の山中陽子さんが指揮した。
 山中さん,まだお若いのは当然として,リーダー特有の凜々しさを発散していた。キラキラしていたなぁ,羨ましいほどに。
 たまたま音楽の才能があって,こういう形で活躍しているけれども,彼女のような人はどの方面に進んでも,ひとかどの仕事をするんでしょうね。
 人をまとめていくってのは,相当に大変なことだろうから,その過程で色々と磨かれますよね,途中で潰れさえしなければ。
 でも,石はいくら磨いたところで石なわけで,彼女の凜々しさは,BBVを始める前から彼女の中にあったものだろうな。
 その彼女が作曲した「One」も披露。

● ゴスペルとは「教会で歌われる賛美歌を黒人音楽として発展させたもの」。県内にもいくつかのグループがあることは知っていたけど,そこにとどまっていた。黒人音楽を日本人が歌ったところでサマにならないだろう,と固く思ってました。
 で,聴いてみてどうだったかというと,楽しんで歌っているなぁという感じですね。これなら,ひょっとすると,歌うというそれだけで完結できるかもしれない。聴衆に聴かせるというのは要らないかも。
 神をたたえるための音楽だからね。自分が神と向き合ってれば,ほかに何も要らない。

● 再び,細野さんが登場して,ジュリオ・カッチーニの「アヴェ・マリア」。これも聴きごたえあり。
 「アヴェ・マリア」はシューベルトをはじめ何人もの作曲家が作品を残しているけど,全部まとめて森麻季さんのCDで聴くことができる。ぼくはそれで聴いているけど,今回はチェロの伴奏とBBVのバックコーラス付き。
 最後はチェロのみで,クレンゲル「讃歌」。
 というわけで,今回の演奏会は「Play to Pray」。神に捧げる祈りの演奏。にしては,だいぶ明るいステージで,腹にもたれることがない。

● プログラムに掲載されている宮田豊さんの「ごあいさつ」も収穫。バッハについての短い紹介文として,ぼくが言うのも変だけど,出色のものではないだろうか。
 彼は終演後にも挨拶。チェロは人間の声に一番近い音をだす楽器だとか,チェロの魅力をいろいろと。これも面白かったんだけど,ちょっと長すぎたか。
 お茶目な感じの爺さまで,会員からも好かれているようだ。たいていの会員とは師弟関係にあるんだろうから,好かれる以前に遠慮もされているんだろうけど,その遠慮を過大にさせないだけの好かれ方をしているっぽい。

● 唯一の難点は客席にあった。演奏中の乳幼児の泣き声はやはりきつい。演奏中に通路を行ったり来たりする。ケータイの電源は切れと言っているのに,スマホで演奏中のステージを動画に収める。この3つ。
 一人三役なわけね。同一人物がこの3つをやってくれる。乳幼児を連れてきて,泣く子を抱いて通路を横切り,着席中は動画撮影,と。そういうやつって,どういうわけだか前方に席を取る。いやでも目に入る。
 こういう人が何人かいた。ごく少ないんだけど,客席全体に及ぼす影響は甚大。
 もうひとつ。前方右側の扉は演奏中にも開けっ放しになってたんだけど,これだと,ホールが穴のあいたバケツになってしまわないか。何か理由があってそうしていたんですか。

2 件のコメント:

  1. 全く同感。乳幼児の鳴き声が、本当に迷惑であった。たった数人のために何百人の人々が不快な思いをした。
    通常のコンサートでは、「未就学児の入場はご遠慮願います」とあるが、当コンサートはOKらしい。どうしてなのか不思議でならない。来年の演奏会も決まっているそうだが、ぜひ「未就学児入場禁止」にすべきだ。主催者の意向を聞かせていただきたい。

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    1. ファミリーコンサートと銘打って,未就学児の入場を制限しないこともありますね。
      そこは主催者の裁量だと思うのですが,それならそうと開催告知のチラシに明記しておいてもらいたいという気はします。
      そういうものだとわかっていれば,こちらとしても心構えができるし,ならば行かないという決定もできますからね。

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