2009年7月31日金曜日

2009.07.31 間奏4:東大生は頭がいいだけじゃない


● アマオケといえばその代表選手は大学のサークルだ。その多くはホームページを持っている。そのホームページを見て行くのも楽しい。
 それでですね,それぞれの大学のホームページを見ているとですね,ホームページの出来のよしあしも,活動のレベルも,その大学の入試偏差値に比例しちゃってるようなんですよねぇ。
 もちろん,活動のレベル云々は想像でしかないわけだけれども,ホームページから受ける印象は偏差値比例なんですよ。

● やっぱりね,東大って凄そうなんですよ。東大のオーケストラは東京大学音楽部管弦楽団東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団東京大学フィルハーモニー管弦楽団東京大学フィロムジカ交響楽団と,4つもあるようで,東大学生のみが楽員のところもあれば,東大学生がメインだけれども,それに限らず他大学の学生や社会人も参加している楽団もある。
 普通の大学オーケストラは年2回の定期演奏会が活動のすべてってところが多いのに対して,東大のこれらの楽団は地方に出張しての演奏会も多いし,小中高への音楽指導とか,かなり活発にやっているっぽい。

● トレーナーや指揮者も何かレベルの高そうな人で,音楽大学と比べても遜色ないような感じなのですよねぇ。
 早稲田や慶応もそうなんですねぇ。やっぱり偏差値の高い伝統校は強いというか,活発に動いているようなんですよ。

2009.07.26 トリオ・ラ・プラージュのファンタスティック・コンサート

那須野が原ハーモニーホール 大ホール

● 那須野が原ハーモニーホールで「トリオ・ラ・プラージュによるファンタスティック・コンサート」があった。チケットは千円。
 「トリオ・ラ・プラージュなるユニットは,ピアノの渚智佳,ヴァイオリンの田口美里,クラリネットの近藤千花子のトリオ。渚さんのピアノと田口さんのヴァイオリンは、先日の「メンデルスゾーン生誕200年記念コンサート」で聴いている。充分に堪能できたので,今日のこのコンサートも聴いてみようと思ったわけだ。

● 今回のは夏休みに親子でクラシックを聴く機会を提供しようという催しで,花王が協賛している。大田原市と那須塩原市で母子検診を受けた母親には招待状を2枚ずつ配ったそうだ。ゆえに客席には親子連れ,未就学児が多い。
 大ホールで行われたのだが,座席は半分以上空いていた。

● 子供対象のコンサートは6月に真岡市民会館で経験している。全然無問題だった。今回もうるさく騒ぐこともなく,子供たちはおとなしく聴いていた。
 演奏者もひじょうに真面目に務めを果たしていて,その態度には好感が持てた。彼女たちは演奏のプロではあっても,授業の先生はやったことがないだろう。今回のコンサートは,いうならクラシックコンサートバラエティ版を主宰するようなものだから,普段の演奏とはだいぶ勝手が違ったはずだ。
 とはいえ,彼女たちはこのコンサートをすでに何度も重ねているようだ。

● しかし,上記のような趣旨なので,音楽のお勉強の時間があったりして,音楽そのもの,演奏そのものに沈潜するには不適な環境だった
 千円以上の価値は間違いなくあったし、素敵な90分間を過ごすことができたんだけど,ちょっと食い足りなさが残った。
 典型的なナイモノネダリなんですけどね。今回はそういう趣旨のコンサートだったわけだし,そのことは承知のうえで行っているんだから。

● それに,ぼくの音楽に対する知識は3歳の子供と変わらないので,今日の話を聞くまで全然知らなかったこともいくつもあった。そういう意味で実際,勉強になっているんですけどね。

2009.07.10 メンデルスゾーン生誕200年記念コンサート

那須野が原ハーモニーホール 小ホール


● 大田原市にある那須野が原ハーモニーホールに行ってきた。この施設は平成5年に大田原市と西那須野町(現在の那須塩原市)が共同で設立。開館は平成6年12月。
 ここの小ホールで「メンデルスゾーン生誕200年記念コンサート」があった。チケットは全席指定で2千円。小ホールの座席数は399なのだが,事前に売り切れることは通常ないんでしょうかね。当日,後ろの方の席だったけど,無事にチケットを購入できた。

● ハーモニーホールというくらいだから,音響効果に配慮して設計・建築され,「音響家が選ぶ優良ホール百選」に選ばれているそうだ。
 平成6年というとバブルがはじけ始めた頃ですかね。建物は前衛的な建築で,バブルの残り香をそこここに残している。設置者にとっては最も悪い時期に建ててしまったのかもしれないが,利用者にとってはラッキーこのうえないといっていいかも。

● ロビーも天井が高くて気持ちがいい。休憩用の椅子とテーブルもたくさん置かれている。床から高い天井まで壁はガラスになっている。人工の川が設えられていて,所々に氷の模造品が置かれている。
 正直,この模造品には疑問を持った。それから感じるものは涼しさより鬱陶しさだ。どうしてこんなものを置いているのかと思ったんだけど,夜は印象が一変する。氷がライトアップされて,今度は間違いなく涼しさを演出するのだった。
 ぼくは3時間も前に着いたので,この椅子に座ってコーヒーをすすりながら本を読んで過ごした。他に誰もいない。いい時間を過ごすことができた。
 ロビーも音響効果抜群で,クシャミをするとエコーがかかる。隣でお喋りされると辛いかもね。

● 18時半からホールの館長を務めている丹羽正明氏によるメンデルスゾーン解説があった。スライドを使って解説する。本人は後期高齢者になったと語っていたが,張りのある声で若々しい感じの人。
 19時半から演奏。曲目はヴァイオリン協奏曲ホ短調の第1楽章,ピアノ三重奏曲第1番ニ短調など。奏者はピアノ,ヴァイオリン,チェロがそれぞれ一人。
 奏者も書いておこう。ピアノが渚智佳,ヴァイオリンが田口美里,チェロが金子鈴太郎。丹羽氏によると,金子さんは栃木県出身,3人とも「コンセール・マロニエ」の優勝者とのことだ。

● 田口さんのヴァイオリンが音を発した瞬間に脳がふるえた。鳥肌が立つ感じがした。鳥肌が立つって言い方は比喩かと思っていたんだけど,そうじゃなかったんだね。ほんとに鳥肌が立つんですよ。
 来て良かった,元は取れた,と思った。あとは奏者について行くだけだ。
 が,それが意外に難しいんですね。日常茶飯の雑念が次々に湧いてきて,気持ちがそちらに行ってしまう。気づいて演奏に重心を戻す。その繰り返し。ぼくは経験がないが,座禅をするとこんな感じになるのかと思った。

 メンデルスゾーンでぼくがよく聴くのは,交響曲の3番と4番だが,これを機にほかの作品も聴いていこうと思う。
 豊かな金曜日の夜になった。9月4日には「ハイドン没後200年記念コンサート」があるので,そのチケットも買っておいた。今から楽しみだ。

2009.07.07 間奏3:茂木健一郎さん


● ぼくをライブに導いてくれたものは,地元図書館ロビーの壁に貼られていた真岡市民交響楽団の定期演奏会のポスターだった。今年の4月のこと。
 そのポスターに反応したのは,ぼくの音楽の聴き方が変わりつつあったことが背景にある。変わったというより,量的に拡大していたこと。その拡大を可能にしてくれたのがiTunesであり,カーナビのハードディスクだった。

● 音楽を聴く時間を増やす方向に導いてくれたものが,じつはもうひとつあって,それは茂木健一郎氏のいくつかの音楽本だ。
 対談であったり,エッセイであったりするが,江村哲二氏との対談本『音楽を考える』(ちくまプリマー新書)と『すべては音楽から生まれる』(PHP新書)の2冊を読んだことだ。読んでいるときには,自分が音楽にここまで傾くとは思ってもいなかったけれども,影響を受けていたんですねぇ。
 しかし,これも読んだのが仮に数年前だったら,こうはなっていなかったろう。それやこれやいろんな理由が絶妙に重なって,この変化を作ってくれた。

● その茂木さんが次のような発言をしている。
 「あくまでも経験則で申し上げるのですが,音楽CDで名演奏を繰り返し聴く行為は,様々に比較して分析するという意味で,とても「知的な営み」だと思います。その点,生演奏は「全身が圧倒されるような感情の経験」で,極端な話,演奏は多少下手でも問題ないと思います」
 まったく同感。っていうか,まずこの発言を読んでいて,それが頭に刻まれていたために,アマチュア楽団のライブでも心おきなく感激できているのかもしれない。
 実際,CDを聴くのとライブを見るのとでは,反応する脳の部位が違うように感じる。

2009.07.04 宇都宮大学管弦楽団第67回定期演奏会

宇都宮市文化会館 大ホール

● 7月4日(土),夕方6時から宇大管弦楽団の定期演奏会があった。入口で当日券を買った。8百円。週8千円のこづかいからでも痛みを感じずに出すことのできる金額だ。
 しかし,チケットで入場する人は少なくて,多くの人がハガキを手にしている。どういういことなのかわからなかったが,その謎はすぐに氷解した。演奏会についてのアンケートに答えると,次回の招待状が送られてくるのだ。
 観客の入りは宇都宮シンフォニー・オーケストラよりはずっと多く,栃木県交響楽団のときよりもやや少なめ。

● 若い学生の演奏はどうだったか。充分に堪能できた。知らない世界へ連れていってもらえた。
 彼らの技量の巧拙はわからない。でも,たとえ技術はイマイチであったとしても,訴えてくるものはある。音楽じたいが持つ何ものかと演奏に向かう学生たちの姿勢が,技術の巧拙を相対化してくれる。
 今度は高校生の演奏を聴いてみたい。音楽科のある高校じゃなくて普通の高校の生徒たちの演奏。技術的に巧いはずもないが,たぶんそれは聴くうえでの妨げにはならない。10代の若者がどんな表現をしてくれるのか,実際に確かめてみたくなった。

● メインの出しものはドヴォルザークの第9番「新世界より」。学生の演奏を聴きながら,アメリカの風物が中欧人のドヴォルザークの耳目にはどのように映っていたのか,とりとめなく想像をめぐらせた。
 ほかにはサン・サーンスの「チェロ協奏曲第1番」。招待演奏者はチェロの上森祥平さん。彼のチェロ独奏を聴けただけでも,来た甲斐があったと感じた人も多いだろう。
 指揮は村中大祐さん。

● パーカッションは何気にカッコいい。叩いた直後,さっと素手で抑えて音の振動をとめる仕草に惹かれる。最後列の一番高いところに立っているから,指揮者の次に目立つしね。

● ともあれ。若い学生さんに幸せな時間をもらった。次の演奏会は12月になる。今から楽しみだ。

● 今となってはこの年齢になるまでオーケストラと無縁できたことが悔やまれるばかりだ。
 でもね,しょうがないってこともわかってる。こういうのって縁だから。ベストのタイミングで会っているのだと思うしかない。